◇かいきょうく【開教区】
浄土真宗のみ教えを広く世界各地に伝えるために設けられた、国外における地域区分で北米・ハワイ・カナダ・南米の四開教区があります。なお「開教区」の区分とともに「開教地」(メキシコ・ヨーロッパ・台湾・オーストラリア)があり、関数活動がすすめられています。
〔開教区〕
◎北米(アメリカ合衆国)=別院5、仏教会(寺院)56。開教使62名、信徒総数2万名。
◎ハワイ=別院2、寺院34。開教使34名、信徒総数7万名。
◎カナダ=仏教会18。開教使10名、信徒総数9千名。
◎南米(ブラジル)=別院1、寺院53。開教使17名、開教使補17名、信徒総数8万名〔開教地〕
◎寺院・教会9。開教使11名、信徒総数330名。 (1993年調査)
◇カウンセリング
個人のかかえている問題を解決するためにカウンセラー(助言者)とクライアント(相談者)との信頼関係を通じて行われる援助活動。この場合、そのカウンセリングが成功するかしないかは、カウンセラーの態度にかかっています。カウンセラーは権威的な態度で命令・説得するべきではなく、クライアントの立場に共感できることが大切です。これを指示的方法と呼ぶのに対して、前者を非指示的なカウンセリングと呼んでいます。
◇かみ【神】
一般的には超自然的な霊妙のはたらきをもつ存在をいいます。人知ではかり知ることのできない能力をもち、.人間の禍福を支配する霊感を有するものと考えられていますが、自然崇拝にみられる自然神をはじめ祖霊神・職能神・創造神、さらにキリスト教の唯一絶対神にいたるまで神観念は種々さまざまです。わが国においては神道の影響がつよく、神聖なる存在であるとともにバチ、タタリ、呪いなどを与えるものとして畏怖されています。また、神を祭り、あるいは祈ることによっていわゆる現世の利益を恵まれると考えられています。仏教では神の存在を必ずしも否定しませんが、それは仏教の歴史の中で取り入れられたものです。わが国では神仏習合説の影響によって神仏一体の観念が依然強く残っています。しかし、浄土真宗では神祇不拝の立場をとり、神を信仰することはありません。
◇かんきょうもんだい【環境問題】
50億年の地球の歴史と30億年の生命の働きによって整えられてきた地球環境が同じ生命を持つ人間によって、近代の僅かな歴史的期間に全体の調和が破られ、危機にみまわれています。先に先進国と自称する国々において、国権と結びついて行う産業活動は、資源の浪費と収奪を押し進め、進歩・開発・豊かさの名のもとに科学技術を悪用して、数々の有害物質と生命殺戟の装置を作り出してきました。それは、大気を汚し、水を染し、数多くの生命を殺し、地球の保護膜であるオゾン層までも破壊しょうとしています。また、森林の破壊は地表の砂漠化を促進し、湖沼や河川・海浜の乱開発で自然の水辺を壊し続けています。これも地球環境にとって最も大切な生態系をずたずたに引き裂いているのです。そして、この環境破壊は、エントロピー(熱エネルギーの不可逆現象)の増大化をまねき、地球の温暖化を進め、人類の未来に対して深刻な懸念が現実の課題となっています。そこで提唱されたのが、「持続可能な開発」であり、これは開発と保全を調和させ、社会の発展を持続させる考えであり、「われら共有の未来」のためとして、 1988年国連総会にて決議されました。
◇がんたんえ【元旦会】(修正会)
仏教各宗で元旦に行われる法会です。浄土真宗では如来の慈光の中で御同朋御同行ともどもに新年を祝い、念仏生活を力強く歩む思いを新たにする元旦の法要として営なまれます。元旦会あるいは修正会ともいいます。
◇かんぶつえ【灌仏会】
釈尊の誕生を祝して毎年四月八日に行う法要で、一般には花まつりといいます。花でかざった御堂に誕生仏を安置し、甘茶を頭上からそそぎ、釈尊の誕生を祝う行事で、誕生仏は右手で天を、左手で地を指して、「天上天下唯我独尊」の宣言をされた釈尊の誕生の姿を表しています。浄土真宗では、釈尊は阿弥陀如来の本願を説かれるために誕生されたとしています。その釈尊の出世本懐を慶讃する法要です。
◇きかんうんどうすいしんいいんかい【基幹運動推進委員会】
基幹運動を推進する中枢機関として、「基幹運動推進委員会設置規程」(昭和61年=宗則第二号)に基づき中央・教区・組にそれぞれ設置される委員会です。中央推進委員会は基幹運動本部長を会長とし、教区推進員会より選出された委員 31名によって構成されます。委員の任期は2年。基幹運動について審議し、本部長に答申するほか、運動推進施策について調査研究することを任務としています。教区推進委員会は、組から選出された委員・教務所長の指名する委員など、各教区の区令で定める委員によって構成されます。会長には教務所長が就任します。委員の定数は組数の 2倍以内と定められています。内部組織として分科会・専門委員会などを設置することもできます。組推進委員会は、組内の僧侶および門徒の教化団体の代表者で構成されている例が多く、委員の任期は 4年です。また、組長が会長に、組相談員が主任に就任し、運営にあたることを原則としています。
◇きかんうんどうすいしんそうだんいん【基幹運動推進相談員】
基幹運動を推進するために、中央・教区・組に、それぞれおかれている推進専従職です。中央には5~9名の中央相談員をおき、基幹運動推進にかかる教学・運動理念・運動計画の趣旨の徹底をはかります。また教区・組などの宗務機関や基幹運動を推進する人びとに対する相談と啓発活動を主たる任務とします。中央相談員は、本部長の指示するところに従い、基幹運動本部駐留、あるいは連区担当を分担します。教区相談員は、本部長の推薦により、総長が任命します。教務所長および教区基幹運動推進委員会の指示に基づき、基幹運動推進の任にあたります。また、基幹運動推進委員会の主幹となります。組相談員は、組長の推薦により、教務所長が進達したものについて、総長が委嘱します。組相談員は、組基幹運動推進委員会の主任となり、関係事務を統括します。任期は、中央・教区相談員が 2年。組相談員が4年です。
◇きかんうんどうほんぶ【基幹運動本部】
基幹運動に関する総合基本計画の策定および実施などに関する事項、また推進にあたって必要な調査・点検など、広範囲にわたる活動の統括・実施の推進にあたっている部門。その主旨を、関係諸機関ならびに全宗務員・全門信徒に伝達、徹底してゆく役割を担っています。
◇ききょうしき【帰敬式】
帰敬とは帰依の意味です。念仏者として本願を深く敬い帰依する身となる儀式です。御影堂において、門主のおかみそり(剃髪のかたちの作法)をいただき、法名を受け、名実ともに仏弟子となる決意を新たにします。
◇きょうか【教化】
教導感化の略。教化とは如来さまのお仕事であります。ですから、私たちに出来るのは、み教えを勧めることであり、それを勧化(かんげ)とか伝道という言葉で表現してきました。如来のお仕事のお手伝いをするという意味で「教化」ということばを使います。
◇きょうがく【教学】
〝教学〟とは教を学ぶということ。教とは聖人が本典の中で、「大無量寿経、真実の教、浄土真宗」と示されています。ここにいわれる浄土真宗とは、本願力つまり本願のみ教えのことであります。ですから大無量寿経に説かれた本願のみ教えを明らかにされた七高僧、宗祖、列祖の解釈を学ぶことも教学といえます。
◇きょうかそしき【教化組織】
伝道教化運動を推進するために、年齢別性別などで組織化されたものが「教化組織」です。現在教団には、門徒総代会、仏教婦人会総連盟、全国仏教壮年会議、仏教青年連盟、少年連盟、スカウト指導者会、保育連盟などの教化組織があります。
◇きょうぎ【教義】
教と義。教えと教えによって明らかにされた内容。教とは仏の教えで、浄土真宗においては「真実の教を顕さば、すなはち〝大無量寿経″これなり」(教行信証・註釈版聖典 135頁)と示されています。教義とはその『仏説無量寿経』の教えの根本を明らかにされた親鸞聖人の教えを言います。
◇きょうく【教区】
浄土真宗本願寺派が、全国を区分して設けた区域をいいます。100カ所以上の寺院(または宗教法人である教会)を有する区域を最小単位として、円滑な教団運営を行い、基幹運動を積極的に推進するため、全国を 31に区分しています。また、教区を管轄する事務所を教務所といい、教区の長を教務所長といいます。
◇きょうし【教師】
浄土真宗本願寺派の僧侶で二十歳以上の者が、教師授与を宗派の教師資格審査会に申請し、その資格審査を通過すると、教修を受けることができます。この教修を修了した者に、授与される資格が教師です。教師は、僧侶の範たる者に授与され、住職・布教使補などを申請するときの基礎資格でもあります。
◇きょうしゅう【教修】
浄土真宗本願寺派における教修には、教師教修と門徒推進員養成中央教修の二つがあり、教師あるいは門徒推進員として、教学その他必要な事柄を修得する課程をいいます。教師教修は、得度を受けて僧侶になった者が、教師授与を教師資格審議会に申請したうえで、受けることができます。また、門徒推進員中央教修は、門徒推進員養成連続研修を修了した者が受講します。
◇きょうしょ【教書】
1980(昭和55)年4月1日、即如門主は、門主就任を仏祖に奉告する「伝灯奉告法要」にあたり、自らの決意と抱負を『教書』として宣べられました。それは、「宗教の課題と現代」「浄土真宗と念仏者の責務」の二章からなっております。
◇きょうしょう【教章】
正しくは「浄土真宗の教章」といいます。1967(昭和42)年の御正忌報恩講法要の最終日に勝如門主(当時)より発布されたご消息。浄土真宗の教義の綱格がわかりやすく示されています。内容は「宗名・宗祖・本尊・経典・教義・宗風」について述べられてあり、浄土真宗の門信徒が心得るべき基本事項になっています。
◇きょうだん【教団】
同じ信仰のもとに集う人びとの団体のことであり、また、一定の組織を持つ社会的集団をいいます。従来は、神道系の教団を教派、仏教系を宗門、キリスト教および諸教系を教団と称しました。しかし現在では、どの宗教団体も、〝教団″と呼ばれています。なお、浄土真宗本願寺派では、みずからの教団を〝宗門〟という呼び方をする場合もあります。
◇きょうだんれんごう【教団連合】
親鸞聖人を宗祖と仰ぐ浄土真宗の各教団のうち、十派(浄土真宗本願寺派・真宗大谷派・真宗高田派・真宗仏光寺派・真宗興正派・真宗木辺派・真宗出雲路派・真宗誠照寺派・真宗三門徒派・真宗山元派)によって結成された団体を「教団連合」といいます。真宗教学の宣布・教化などに関する総合的対策と企画の推進など、時代の要請に対応してゆく組織として、 1970(昭和45)年に発足しました。主な企画としては、統一勤行の制定、啓発印刷物(カレンダー)などの発行。また、同和委員会による研修会や、企画委員会における靖国問題への共通理解、公式参拝の反対声明などを行っています。また教団連合の事務局は、浄土真宗本願寺派と真宗大谷派とに、交代に設置されています。
◇ぎれい【儀礼】
浄土真宗本願寺派の儀礼は法要と儀式にわけられます。浄土真宗本願寺派では「法要儀式規程」の定めるところにより「仏祖を礼拝供養し、経典を読誦し、仏徳を讃嘆して、報恩の至誠を表す行事」を法要といいます。法要には報恩講、宗祖降誕会、彼岸会などの恒例法要と慶讃法要、伝灯報告法要、追悼法要などの臨時法要があります。また「仏前に於いて行う、法要以外の行事」を儀式といい、儀式には、帰敬式、入門式、初参式、成人式、住職補任式、結婚式、葬儀をいいます。これらの儀式は自信教人信の実践として行われるのですから聞法並びに仏徳讃嘆の大切なご縁なのです。
◇くどく【功徳】
善根を積み重ねた功績とその功績により得られた徳、及び、その積み重ねた善根などの徳が、他におよぶことをいいます。浄土真宗においては、親鸞聖人が「功徳と申すは名号なり」(『一念多念文意』)と示され、また、「真実功徳は誓願の尊号なり」(『尊号真像銘文』)と示されているように、自力で積み重ねた功徳をいうのではなく、阿弥陀仏の名号のはたらきをいいます。
◇くよう【供養】
仏教一般では、食物や衣服などの供物を、仏・法・僧の三宝にお供えし、尊敬と感謝を表す行いをいいます。浄土真宗においては、仏恩に報いる讃嘆供養のことをいいます。したがって、供養とは死者の冥福を祈って読経することや、先祖の霊に対し供物を捧げ、追善することなどではありません。
◇けいしんすうそ【敬神崇祖】
神を敬信し、祖先を崇拝すること。神道土俗信仰と家系・血筋を重要視する伝統的な観念とが結びついたもの。明治維新以後成立した国家神道では、とくにこれを利用して廃仏毀釈などを行ない、また祭政一致の近代天皇制をしいた政府も国民の思想統制のため、教育勅語などを通じてこれを国民に強要しました。浄土真宗は、「四海のうちみな兄弟」から、「父母に向いて礼拝せず」「鬼神を礼せず」(『教行信証』化巻)と示されるように、敬神崇祖をいましめています。ただし、これは父母を粗末にし、ないがしろにするという意味ではなく、利己的な祈願の敬神、排他的で差別的な崇祖をいましめているのです。
◇けんぎ【建議】
基幹運動推進委員会設置規程に基づき、教区推進委員会は中央推進委員会に対し、また中央推進委員会は本部長に対して、基幹運動の推進について必要事項を具申することを建議といいます。
◇げんじつたいおう【現実対応】
真実信心に生きる本質は、現代社会において苦悩する人びとに共感していくところにあります。この信心にうながされて、当面する現実社会の諸問題に対応しょうとすることが現実対応といわれます。特に重要な問題として、差別・人権・国家と宗教・平和・靖国・環境・福祉・ビハーラ・青少年問題などがあげられます。
◇げんしょうじゅうやく【現生十益】
教行信証には、真実の信心を得たものには、現生において十種の利益が得られることが説かれています。その十種とは冥衆護持・至徳具足・転悪成善・諸仏護念・諸仏称讃・心光常護・心多歓喜・知恩報徳・常行大悲・入正定聚の益をいいます。この利益により、あらゆる習俗・俗信にとらわれないで、人々とともに浄土へのみちを力強く生きぬく生活が開かれてくるのです。
◇げんぜりやく【現世利益】
現世で受ける仏、菩薩の利益。浄土教では、仏・菩薩より与えられる恵みをいいます。とくに浄土真宗では、阿弥陀仏より恵まれた南無阿弥陀仏の信心の徳によって、天神地祇・諸仏菩薩にまもられて、悪鬼悪神にさまたげられず、あらゆる習俗・俗信にとらわれないで、明るく力強く生きる道が開かれることをいいます。また、信心の徳そのものとして明らかに説かれいる現生における十種の利益のことです。
◇けんたい【献体】
医師になるためには、人体解剖を実習し、その構造を知ることが必要です。そのために自分の遺体を無報酬、無条件で提供することを献体といいます。献体と献腎(腎バンク)は同一人はできませんが、献体と献眼(アイバンク)は同一人で可能です。「某(それがし)親鸞閉眼せば、賀茂河にいれて魚にあたふべし」(改邪鈔・註釈版聖典 937頁)という親鸞聖人のおこころにより、遺体に関するタブーをもたない浄土真宗のお同行に、献体の賛同者が多くみられます。
◇ごう【業】
サンスクリット語「カルマン」の漢訳で、行為を意味します。身・口・意の三業というようにいわれますが、とくに身体と言葉の行為よりも、それらのもととなる心の行為を重視しているところに注目しなければなりません。また、行為そのものだけでなく、行為が及ぼす影響もふくめて「業」といいます。
◇こうしゃ【講社】
講とは、もと経論を講説する法会を意味しましたが、後には、信者が集まって法義を讃嘆する会合や、その団体をさすようになりました。本願寺における講とは、蓮如上人のころからはじまり、地域集落を単位とする小寄講や、それらを統括する大寄講も組織されました。こうした講の組織を講社といい、講社の全員を講員といいます。法義讃嘆をはじめとして、ご本山護持のため懇志進納や社会奉仕から会員の相互援助活動まで、幅広く行われています。講社の全国的組織として、本願寺全国講社連絡会が組織され、現在約500の講社が活動を続けています。
◇こうれいしゃもんだい【高齢者問題】
医学の進歩と共に、人間の寿命は大きく延長され、高齢者社会を迎えています。それにともない、老・病・死に関わるさまざまな問題も生起しています。これらの問題に対しては、医療、福祉、宗教、その他の領域からの積極的な関与が必要とされていますが、個別の対応だけでなく、共同体制で取り組むことも必要とされます。さらに、御同朋の社会をめざす念仏者は高齢者のかかえている根源的な問題について、積極的に関わっていく行動が要請されます。
◇ごくらく【極楽】
サンスクリット語「スカーヴァティー」の漢訳。もろもろの楽しみが常にあり、苦しみがまじわらないところ、という意味です。阿弥陀仏の浄土のことです。
◇ごしょうき【御正忌】
御正当の忌日の意です。浄土真宗では宗祖親鸞聖人の祥月命日をいい、この日を期して法要が営なまれます。この法要では宗祖のご苦労をしのびつつ遺徳をたたえ、未信の人は本願を聞きひらき、得信の人は味わいを深め、報徳の懇念をあらわす浄土真宗においては最も大切な法要であります。本願寺では毎年 1月9日~16日の間の七昼夜にわたり全国から門信徒が参詣し盛大に営まれます。
◇ごしょうそく【ご消息】
手紙を意味することばです。親鸞聖人のものを『ご消息集』、蓮如上人のものを『御文章』といっています。歴代の門主がその折々にご消息という形で自分の意向を表明され、教団の取り組みと私たちの信心のありようを示されています。