テレホン法話 2020年   TEL:083-973-0111

山口教区の青年布教使による3分の法話が聞けます。10日毎に法話は変わります。


2020年1月21日〜31日

泥の中へ

大津東組西福寺 和 隆道

 

これは、私が小学校へ入った頃の話だったと思います。ある日、私は、友達と木登りをして遊んでいました。誰が一番高く登れるか、そんなことを競っていたと思います。私は木登りが得意でしたので、調子に乗ってどんどん枝の先の方へ登っていきました。「みんなも早く来いよ」、私がそう言ったその時です、私が登っていた木の枝が、「ボキッ」と根元から折れてしまいました。「うわーっ」、「ドボッ」、私はドブ川の中へ真っ逆さまに落ちていきました。顔も体も半分以上泥の中に埋まり、身動きがとれません。目も開けられません。なんとか息はできます。「助けてーっ」、私は必死に泣き叫びましたが、友達もオロオロするばかりで誰も助けに来てくれません。私は思いました、「私の人生もここまでか、思えば短い一生であった…」。

するとその時です。「ガバーッ」と、誰かが私の体を泥の中から抱き上げてくれました。それは外でもない、私の母親でありました。我が子のためなら、どれほど汚い泥の中へでも一目散に飛び込んで抱き上げる、それが母親という者なのでありましょう。その後病院へ行きましたが、命に別状はなかったとのことであります。

「生死の苦海ほとりなし ひさしくしずめるわれらをば 弥陀弘誓のふねのみぞ のせてかならずわたしける」、我々は、生死の苦海、煩悩の泥の中に沈む者でございます。自らの力では、その泥の中から抜け出すことはできません。そのことを深く哀れんで下さったのが、大悲の親様である阿弥陀如来様でございます。いてもたってもいられずに、南無阿弥陀仏の御名号となられて、泥の中に沈む私の元へ来て下さっておられます。この南無阿弥陀仏のお働きによって、命終わり次第には、間違いなく西方の極楽浄土へ生まれさせていただくと、聞かせていただくばかりでございます。